2018/05/28 13:06

 本の内容概略ができたので、それに企画書、著者プロフィール、見本原稿などをつけて既存の出版社に売り込みに行こうと考えたのですが、そこには大きな問題がありました。

 出版してくれる会社を見つける。まずこれがとても難しいのです。私自身、これまでもいくつもの出版企画を、何社のも出版社に持ち込みましたが、採用されたのはごく僅かです。「出版不況」と言われる時代ですから、出版社は企画の採用には慎重で、「これなら売れる」というよほどの裏付けや確信が持てる判断材料がないと採用はしてもらえません。
 その上、由紀先生は、極真空手の世界では知らない人はいないくらいの知名度、実績がありますが、一般に知られているわけではありません。出版社からは「無名の女性の本なんか、売れるわけがない」と判断されてしまうでしょう。
 それでも、なんとか武道格闘技系の本を扱う出版社にあたってみようと思っていたのですが、なにしろ、由紀先生は癌で、手術を予定しています。最悪の事態を考えれば、「どんなに時間がかかってもいいから、いつの日か出版しよう」などとのんびりしたことを言っているわけにはいかないのです。
 さらに、仮に出版社が見つかったとしても、原稿の作成をどうするかという問題もあります。手術を控え、家事や仕事で忙しく過ごされている由紀先生が、本1冊分の原稿を書きおろすのは大変です。私にしてもそのためにどれだけ時間を割いて取り組むことができるのか・・・。
 「本を出版しましょう!」と由紀先生に言ってしまい、「もうやるしかない!」と腹をくくったつもりでしたが、「さて、どうすれば・・・」という困惑は拭い去ることはできませんでした。