2018/06/10 11:00

 10年近くにわたる膨大なブログ記事の取捨選択、整理に取り掛かり、しばらくは私の部屋は、プリントしたブログ記事に埋め尽くされました。日々の雑記、ふざけたような記事を除き、由紀先生の試合にかける思い、日常生活の心構え、人生観、それに心打たれるエピソードなどをプリントしていきましたが、相当な量がありました。中には、ふざけた記事の中に数行、珠玉の言葉が入っているようなものもあります。

 そうした本に載せたい言葉、文章を拾い上げながら、それをどう編集するかを同時に考えていきます。時系列に並べただけでは、なんの脈絡もない、ただの羅列になってしまいます。さらに長期間にわたって書かれた記事ですので、古い内容もあります。そうしたものを読者に古さを感じさせず、あたかも由紀先生が、今語っているようにすんなりと理解してもらえるような文章、構成にしたい。そのためにはどうすればいいのか・・・。プリントした紙の束を広げては並べ、並べ替え、さらには切り取り、つなぎ合わせ、また並べ、と試行錯誤を繰り返しました。
 その作業の中で、常に考えていたのが「私はこの本で何を伝えたいのか、もっとも伝えたいメッセージは何なのか」です。私が伝えたいのは、単に「空手の試合で連戦連勝したすごい女性がいる」ということではありません。「ハードな試合と子育てや家事、仕事、勉強を全部こなしたすごい女性がいる」ということだけでもありません。そうではなく、このブログ全体に流れている、単なる日常雑記ではない、読み手を感動させる何か。それがもっとも伝えたいことのはずです。それが何なのか、私自身がはっきりと把握し、言葉にできなければ、ブログ記事の構成はできません。
 このブログ全体を貫く、どんな記事にもエピソードにも共通するメッセージ、それは何だろうか。
 それを考え続けていたある日、「やめる理由を受け入れなかった」という言葉が閃きました。その閃きから、帯の裏表紙側、そして本文の最初に掲げられている十数行の言葉が生まれました。

 女だから 母親だから 主婦だから もう歳だから ・・・ 周りから「やめろ」と言われたから こんなすべてを「やめる理由」にしなかった 山本由紀の言葉

 山本由紀の本当のすごさはここにあるのです。このフレーズがまとまったとき、私は「これで本はできる」と確信しました。